【企業向け:人生100年時代のシニアマーケティング】「シニア」とは誰なのか。総人口の3割を超える人たちにペルソナは通用しない

「超高齢社会」は、少子化や労働人口の減少と結びつき、日本が抱える大きな問題点となっていますが、その反面、シニア市場が巨大化したことで大きな経済効果が期待されています。事実、この巨大な市場をビッグチャンスと捉え、多くの企業が参入してきました。 しかし、成功している企業は一部。市場の規模とは裏腹に、多くの企業が撤退を余儀なくされてしまったのです。では、なぜ市場規模が大きいのにも関わらず、ある程度の品質が確保された「高齢者向けサービス・商品」が失敗してしまうのでしょうか?
2019/02/28

2060年、総人口の39.9%が高齢者に。年齢層別では最大のマーケット。

2018年現在、日本の高齢者人口は3,461万人を突破。総人口に占める割合は27.3%にまで及び、4人に1人が高齢者となりました。内閣府の調べでは、2025年の時点で30.3%、その後も増加し続け、2060年には39.9%にまで達すると言われています。

巨大化していくシニア市場。その規模は107.6兆円。

既にシニアマーケティングを行う上では当然のこととなっていますが、失敗してしまった企業は「市場の分析及びシニアの選定」の時点から間違えていたのです。

 

つまり「当社にとってシニアは誰なのか?」と、深掘りせずにゴーサインを出してしまったことが原因の1つなのです。そこで今回は、シニアマーケティングの成功・失敗事例を見つつ、始めの分岐点ともなる「市場の分析」の部分から掘り下げてみたいと思います。

人生100年時代、シニア市場の「大きなビジネスチャンス」は数値的にも証明されている

日本は高齢化に伴い「シニア市場」が巨大化。その経済効果は、みずほ銀行発表の財務省財務総合政策研究所調査によると、2012年の時点で68.5兆円。2025年には107.6兆円にまで及ぶとも言われています。

 

内訳を見てみると、大きく「医療産業・介護産業・生活産業」の3つに分けられ、2012年は「医療産業:39.2兆円・介護産業:8.8兆円・生活産業:20.5兆円」。2025年は「医療産業:62.3兆円・介護産業:21.4兆円・生活産業:23.9兆円」になるとのこと。特に医療・介護産業の規模拡大が著しく、2025年には、合わせて83.7兆円もの巨大な市場になる見込みです。

 

さらに、消費の総体である生活産業も引けを劣らず、2012年から2025年にかけて3.4兆円も拡大。生活産業の分野も「食料」「家具・家事用品」「被服・履物」「交通・通信」「教養・娯楽」と非常に多岐に渡ります。このように、シニア市場にはまだまだ「大きなビジネスチャンス」が眠っているわけですから、今後も多くの産業が参入していくことが予想されます。

健康状態も悩みも千差万別。シニアを大きく4つに分けてみる

ご高齢者もネットでのお買い物が「日常」に

巨大市場に対しマーケティングを行う過程で、市場の分析だけでなく、高齢者の区分に関しても非常に重要視されるようになりました。中でもよく目にするのは、介護が必要かどうかだけで区分し、「ケア・シニア」「アクティブ・シニア」とするもの。

 

しかし、どうもこの分類だけでシニアマーケティングを行うのは好ましくなくなってきました。というのも、2区分だけで分けてしまうと「ケアシニア:17.3%、アクティブ・シニア:82.7%」となり、アクティブ・シニアの定義が曖昧になっている恐れがあるからです。

 

そこで注目したいのが、シニアマーケティング研究所が提唱している考え方。介護認定者を「ケア・シニア」、介護予備軍を「ギャップシニア」、非就労健常者を「ディフェンシブ・シニア」、就労健常者を「アクティブシニア」と、高齢者市場を4つに、より細分化して分析しています。

 

また、このように区分することで、2020年時点では「ケア・シニア:17.4%」、「ギャップシニア:29.0%」、「ディフェンシブ・シニア:33.0%」、「アクティブシニア:20.6%」となるため、非常にバランスがとれた形で分析できます。もちろん、各企業が「ターゲット選定」する場合は、さらに細かく見ていく必要がありますが、これだけでも十分定義の曖昧さを避けることができるでしょう。

シニアの特性を「決めつけないこと」が、成功と失敗の分岐点。

失敗したシニアビジネス事例

では次に、実際に失敗したシニアビジネスの事例をみてみましょう。失敗事例はあまりメディアで取り上げられにくいので、高齢社会研究者の一人・村田裕之氏の「団塊・シニアビジネス・高齢社会の未来が学べるブログ」より抜粋して紹介いたします。

 

まず1つ目の失敗事例は、「中高年向け雑誌」。高齢者人口が増えるにつれて、この分野に進出した雑誌は、100誌以上あると言われているようですが、残念ながら発行数10万部を超えているのは「ハルメク」と「サライ」ぐらいだそうです。

 

さらに、フィットネスやカルチャースクールといった「中高年向けの会員制サービス」に進出した企業も多く見られましたが、わずか数年で撤退を余儀なくさた店舗も少なくありません。

 

つまり、企業のマーケティングとは裏腹に、高齢者の消費行動は期待通りにいかない結果となったのです。しかし、なぜこのような失敗が起きてしまったのでしょうか?おそらく、多くの企業が何度も仮説・検証を繰り返した上でのトライだったはず。

 

リーマンショックのような経済危機や増税等があったとは言え、なかなか腑に落ちない点であります。

シニアのニーズの”履き違え”に注意する

この失敗に関して、村田氏は「内容が”てんこ盛り”すぎて、競合商品との差異がぼやけている」からと分析しています。そして、多くの企業が、シニアを「一括りのもの」として考えしまったことで、「シニアのニーズ」そのものを履き違えてしまったからだと考えているようです。

 

そして、今後もますます市場は巨大化し、シニアは多様性を見せていきます。その中で、シニアのニーズを十分に満たしていく為には、「他企業の追従」や「市場全体にアプローチ」していく手法は、より一層通用しなくなるでしょう。

 

そもそも「きっとシニアはこう考えているだろう」としてターゲット選定してしまうのは、失敗が約束されているようなものなので、十分に注意してください。

成功したシニアビジネス事例

クラブツーリズムのシニア戦略「テーマ別のツアー」

失敗事例の次は、成功したシニアビジネス事例を見てみましょう。やはり、成功事例をみることによって、今までなかった視点に気づきます。今回は、その中でも一際有名なKNT-CTホールディングスの「クラブツーリズムの成功例」を紹介します。

 

シニア層のアクティビティの中では、常に上位を「旅行」が占めてきました。しかし、人気度は高いと言えど、旅行業界はなかなか他社との差別化ができず、ツアー価格を下げ「安売り合戦」に。

 

また、ある程度体力的に自信のある方であれば参加できるものなので、ターゲット選定が曖昧になることも大きな懸念点となっていました。

 

そこで、クラブツーリズムが目をつけたのが、「テーマ別のツアー」。このパッケージ化したツアーが、多くの高齢者が抱える「今まで出かけた場所は多いけど、老後は特別な場所に行ってみたい!」といった願望や、「行きたい場所は多いけど、自分達でプランを立てれない…。」といった悩みを解決し、他企業との差別化に成功しています。

高齢者を一括りにせず、個別のニーズを仕分けた的確なアプローチが必要

WEBサイトを見ただけでも「ハイキング・登山の旅」「写真撮影の旅」「歴史への旅」など、様々なテーマが用意されていることがわかります。

 

確かに「まだ自分は若い!」と感じている高齢者の方は、通常のテーマから旅行を選択するでしょうし、これだけ沢山のテーマがあれば、幅広い層の高齢者のニーズを満たすことができます。

 

これだけではありません。その中でも特に注目したいのが、70歳以上の方を対象とした「ゆったり旅70」と、杖・車椅子の方を対象にした「バリアフリーの旅」。どちらもターゲット層は少なく、ニッチ分野ではありますが、的確なアプローチを行い、数少ない高齢者のニーズにまで答えています。

 

さらに、どちらも国内・海外プランが用意されているため、70歳以上・車椅子の方は他社に浮気することなく「旅行するならクラブツーリズムで」となることが想像できます。

 

このようにクラブツーリズムは、「旅行」という大きい枠組みを、一旦個々のニーズに仕分け、的確にアプローチした結果、最終的には大きなシニア層の囲い込みに成功した参考にすべき好事例なのだと言えるでしょう。

みなさんの会社にとって「シニア」とは誰なのでしょうか?

では最後に、みなさんの会社について。つまり、あなた自身がターゲットとする「シニア」について考えておきましょう。失敗・成功事例から様々な視点が見えてきたかと思いますが、まずは「ターゲット選定」を正しく行うことが先決です。

 

ターゲット選定を正しく行うことができれば、巨大化し多様性に富んだシニア市場に取り込まれず、生存ないし成功していくことができるでしょう。「一括り」にするのはもちろん、曖昧な定義のままでは「誰に何を届ける商品・サービス」なのかがお客さんも自分自身も見えてきません。

 

そして、シニアの定義ができた暁には、今回紹介した「4つのシニア区分」「失敗・成功事例」を参考に、「自社だったらどうするか?誰がシニアなのか?」と考え、情報を活かしていってください。

<まとめ:「だれ?」は自分で探すこと>

今回は、巨大なシニア市場をマーケティングする上で大切なことを、失敗・成功事例を通してお伝えしてきました。そして、いかに「シニアを一括り」にするのが危険なことなのか、反対に「個々のニーズを仕分ける」ことがどれほど重要なことなのかお分かりになったことと思います。

 

ですが、注意していただきたい点をお伝えしておきます。先ほど失敗事例を見ていただきましたが、失敗事例から分析して、市場に参入しているようではチャンスを失ってしまう可能性があります。

 

同様に、成功事例を分析して、ただ真似しているようなビジネスプランも十分であるとは言えません。むしろ、成功事例を真似する企業はごまんと出てきますから、あなたの会社が差別化できなくなってしまいます。

 

なにはともあれ、シニアマーケティングを行なっていく上では、常に一歩先を見る力「先見の明」が必要です。ですから、常にアンテナを張り巡らせ、時代の流れとともに的確なアプローチができるようにしていきましょう。