和食は健康的な食事だと言われていますが…
健康的な食事は和食?
和食は食塩摂取量が多くなりがち
日本人が好んで食べる伝統的な食事である和食は、米飯を主食に、主菜や副菜に魚介類や野菜類を多く使い、脂肪分も少ないことから、健康的な食事と考えられています。
一方で、和食には醤油や味噌などの調味料が多く使われるため、1日あたりの食塩の摂取量が多くなりがちなことが問題になっています。
というのも、食塩の過剰摂取は日本人の健康にとって極めて深刻な問題である「高血圧」の大きな原因のひとつであるからです。
高血圧は生活習慣病の中でもっとも多い疾患で、推計では、日本の人口の約3分の1、50歳以上ではなんと2人に1人が高血圧であるとされています。
高血圧は自覚症状がないためついつい見逃されがちですが、放っておくと脳卒中や心臓病、腎臓病などの要因になると言われています。
高齢者の健康に欠かせないカルシウムとたんぱく質
また、カルシウム不足も日本人にとって深刻な問題です。
もともと伝統的な和食にはカルシウムが少ないことが指摘されていますが、特に高齢になると腸でのカルシウムの吸収が悪くなります。
つまり、それまでと同じ食事を摂っていてもカルシウム不足に陥りやすくなるのです。骨密度が低下し、骨粗鬆症になると圧迫骨折や変形性膝関節症などが起こりやすくなります。
さらに、カルシウムを効率よく吸収するためには、十分なたんぱく質が摂れていることも必要です。
つまり、健康寿命を延ばすためには、日々の食事で良質なたんぱく質やカルシウムを積極的に摂ることが大切なのです。
「乳和食」ってどんなもの?
牛乳のコクや旨みを生かして減塩できる!
近年、手間をかけずに減塩ができる新しい調理法が注目されています。
「乳和食」と言って、味噌や醤油などの伝統的調味料に「コク味」や「旨味」を有している牛乳を組み合わせることで、食材本来の風味や特徴を損なわずに食塩や出汁を減らし、美味しく和食を食べてもらうというものです。
「乳和食」は、永年、乳を利用した料理の研究を行ってきた、料理家の小山浩子先生により提案されました。
「乳和食」はまた、日本人のカルシウム不足の改善や、特に高齢者で不足しがちな動物性蛋白質を補うことができるなどのメリットもあります。
「乳和食」の3つのメリット
●コクがあっておいしい
牛乳の旨みとコクが素材の味をぐっと引き出すので、味の薄さを感じません。
●食塩を大幅にカット
味噌や醤油の量は半分以下でも大丈夫!料理のおいしさそのままに減塩できます。
●手軽に作れる
いつもの料理に牛乳を使うだけのレシピがほとんど。悩まず手軽に作れます。
「乳和食」でどれくらい減塩できる?
乳和食で減塩できる量はどのくらい?
日本人の食塩摂取量は年々減少傾向にありますが、まだまだ厚生労働省が定める目標値までには差があります。
例えば、平成26年の日本人の1日あたりの平均食塩摂取量は男性が10.9g、女性が9.2gでした。
食塩摂取の目標量は男性が8.0g未満、女性が7.0g未満なので、男性は約3g、女性は約2g減らさなければいけません。
たとえば、ある日の献立を乳和食にするとどれくらい食塩相当量が減るのか見てみましょう。
《ある日の夕食の献立》
・さばの味噌煮
・豚汁
・キャベツのおひたし
・ごはん
食塩相当量 5.0g
さばの味噌煮をさばのミルク味噌煮に、豚汁をミルク豚汁に替えると、食塩相当量は約2.9g。1食で約2.1g減らすことができました。
一方で、カルシウムは81mgから175gと大幅に増えています。作り方はほとんど同じ。
手間をかけずに、これだけの効果があるのです。食事は毎日のことですから、手軽な方が長く続けることができますね。
乳和食の調理法
乳和食の調理法
では、牛乳をどのように料理に生かしていけばよいのでしょうか。
メニューによっていくつかの方法がありますが、代表的な5つ調理法をご紹介します。
●だしにする
だし汁を牛乳に代えるだけで食塩を抑えてコクのきいただしになります。
●調味料をわる・のばす
味の濃い調味料を牛乳でのばすと、旨味を残したまま減塩できます。
●ゆでる・ゆで戻す
野菜をゆでたり、乾物を牛乳でもどすと甘みとコクを加えることができます。
●溶く
小麦粉を牛乳で溶くと、旨味が加わり調味料の使用をおさえることができます。
●酢を加える
温めた牛乳に酢を加えるとカッテージチーズと乳清に分離。それぞれを料理に使うことで調理の幅がひろがります。
「乳和食」を作る時に、ひとつだけ注意しておきたいことがあります。
「コク味」や「旨味」を確保するためには、乳脂肪の役割が重要です。
そのため、乳和食には、「成分無調整牛乳」を利用することが必要です。
牛乳売り場には、「牛乳」「低脂肪牛乳」「加工乳」など、さまざまな種類がありますが、必ず「成分無調整牛乳」を選びましょう。
そもそも牛乳にはこんな特徴が!
牛乳の特徴
「乳和食」に利用する牛乳は、骨や歯を作るカルシウムやビタミン、筋肉を作り内臓を保つためのたんぱく質が豊富に含まれる優れた食品ですが、最近の調査によると、こんな効果もあることがわかっています。
●高血圧を予防
牛乳に豊富なカルシウムやカリウムには、血圧を上昇させる血中ナトリウムの作用を妨げる働きがあることが分かっています。
●メタボのリスクを減らす
男女ともに牛乳・乳製品の摂取量の多い方が、メタボリックシンドロームのリスクが低いことが分かっています。
●健康寿命が長くなる
牛乳を摂取している人は血清アルブミン値が下がりにくく、牛乳を毎日飲むグループの方が生存率が高いことが判明しています。
●骨や歯、筋肉の健康を保つ
丈夫な骨でいつまでも転倒骨折のリスクの少ない健康長寿を実現するためにも、牛乳の豊富なカルシウムを上手に摂ることが大切です。
●血糖値の上昇がゆるやかに
糖尿病を防ぐには、食後血糖値を上げない食事法が重要ですが、牛乳は食後の血糖値の上昇が穏やかな低GI食品です。
今日からできる!乳和食の簡単レシピ
今日からでもできる、簡単な乳和食をいくつか紹介しましょう。
減塩みそ汁
【材料(2人分)】
<ミルクみその基本配合>
みそ 大さじ1
牛乳 大さじ1
水 300ml
かつお節削り節(お茶パックに入れておく) 5g
豆腐 100g
ねぎ(小口切り) 10cm
なめこ 50g
【作り方】
1.みそと牛乳をしっかり混ぜ合わせておく。
2.豆腐は1.5cm角に切り、水けをきっておく。
3.鍋に分量の水を沸かし、かつお節を入れてフツフツとしてきたら、豆腐、ねぎ、なめこを加えひと煮する。
4.かつお節をしっかり絞って取り出したら、1を加えて火を止める。
【ポイント】
塩分の高さが問題となるみそ汁。
みその量を減らすだけでは味気なくなりますが、ミルクと合わせて溶き入れるだけで、コクのある減塩みそ汁に!
さばのミルクみそ煮
【材料(2人分)】
さば 2切れ(各75g)
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酒 大さじ2
砂糖 大さじ1
みそ 大さじ1
赤唐辛子(半分にして種を除く) 1本
牛乳 100ml
【作り方】
- 鍋にAとさばを入れ、牛乳を注ぐ。
- クッキングシートで落とし蓋をして強火にかけ、ふつふつとしてきたら中火よりやや弱火で約10分煮て、そのまま冷ます。
【ポイント】
減塩になるだけでなくミルクの効果で臭みが抜けるため、魚が苦手な方にもおいしく食べていただけます。いつものさば味噌より作り方が簡単なのも嬉しいですね!
その他、Jミルクのサイトには、野菜料理、魚料理、肉料理、和菓子などたくさんの「乳和食」のレシピが掲載されています。