【企業向け:人生100年時代のシニアマーケティング】11万時間という膨大な「自由時間」に、何になら反応し、何になら消費するのか。

2008年に起きたリーマンショックを皮切りに、日本は国民に対して「安泰な老後」を保証できなくなりました。年金受給年齢の引き上げや消費税の増税、さらには、再雇用制度の導入を促し、労働人口の底上げといった政策も目立ちます。このように、経済・国の方針だけでも目まぐるしく状況が変化しているのですから、今までのような「終身雇用制度の上でキャリアを積み上げて老後を迎える」見通しは立てられず、不安を感じている方も少なくないでしょう。 懸念点となるのは、資金面だけではありません。医療技術の発展に伴い平均寿命が増加傾向にある今、「いかにして老後を過ごすか?」といったことも大きな課題となりつつあります。住居、消費先、さらには余暇活動についてまで…。非常に様々な懸念点が交錯しています。 そこで今回は、上記の点をさらに掘り下げ、シニアの老後生活について触れていきたいと思います。都市部と地方でも大きく異なるので、ぜひ参考にしてみてください。
2019/05/24

シニアの老後は自由時間は約11万時間へ

定年退職をした後、果たしてどれぐらいの時間が残されているのでしょうか?

 

厚生労働省が平成29年に発表した「簡易生命表」によると、日本人の平均寿命は、男性が81.09歳、女性が87.26歳。仮に65歳に定年退職したとして、残りの自由時間(睡眠・食事・入浴・トイレなどを抜いた時間)を計算すると、約8万時間あると言われています。

 

そして、この8万時間という数字は、驚くべきことに私たちが20歳から60歳まで労働する時間の総数とほぼ同じになるのです。

 

さらに、人生100年の時代になると、高齢者の自由時間は約11万時間にまで及びます。11万時間という数字は膨大すぎて分かりにくいですが、単純計算で約12.5年(11万時間÷24時間=4583日)を丸々使える計算になるのです。

 

では、この11万時間という膨大な時間を幸せに豊かに過ごす上で、高齢者は一体どのような行動をとっていくのでしょうか?

65歳以降も正社員として働ける環境が整ってきている

まず始めに、金銭問題に対応しなければいけません。

 

たとえ、リタイア後の生活を見越して十分な貯蓄をしてこられた方であっても「お金はあるに越したことはない」ですし、そもそも十分な貯蓄が無い方は、当然何とかしてお金をやり繰りしなければいけないでしょう。

 

そこで注目されているのが「継続雇用制度」です。高年齢者雇用確保措置の元、定年制が廃止され、継続雇用制度の導入や、定年年齢が65歳へと引き上げられたのは記憶に新しいかと思います。

 

そして、もうすでに70歳まで継続雇用をさせる「70歳まで現役で働ける職場づくり」を行う企業が増加傾向にあります。

 

しかし、導入する企業は増加傾向ではあるものの、シニアガイドの調査によると、定年を65歳以上まで引き延ばした企業は、全体の10.3%。

 

この数字を低いととるか高いととるかは人それぞれですが、「体力のあるうちは働きたい」と考える高齢者にとって”希望の光”であることは間違いないでしょう。

 

老後生活は都市部?地方?

1番の問題点である”金銭面”が徐々に改善されつつある中で、高齢者は「いかに余暇を過ごすか」についても問題視しています。特に「都市部に住むか地方に住むか」だけでも、ライフスタイルが大きく変わってくるため、シニア予備軍も注目している点であります。

「都市部は若者が住む街。地方は高齢者が余暇を過ごす場所」。そういったイメージがあるかもしれませんが、近年では徐々に高齢者も都会に移り住むようになってきました。

 

中でも東京都は、将来的に高齢者人口が著しく増加することが予想されており、人口問題研究所の調べによると、2015年から2035年にかけて約76万4千人も増加する見込みです。

 

やはり、都市部の方がインフラ設備も整っていますし、公共交通機関もはるかに発展してるため、「住みやすさ」を重視するとなると、都市部へと移り住む方が増えているのでしょう。

 

しかし、この状況に「首都圏の高齢化問題」として警鐘を鳴らす方もいます。確かに東京都は利便性が高いのですが、病院病床数は全国で最低レベル。

 

高齢者にとって「住み良い街」となるかどうかは、まだハッキリと断定できないのです。

 

では、地方はどうでしょうか?先ほど、高齢者は徐々に都会に移り住んでいると申し上げましたが、近年「UIJターン」に目をつけた地方都市が続々と施策を講じています。一例を挙げますと、京都府は、企業に対して「UIJターン採用の経費を補助」し、若手労働者の誘致をしています。

 

また、都市部より地方の方が出生率が高くなりつつあります。厚生労働省が発表した「人口動態統計月報年計の概要」によると、出生率の上位3県は「沖縄・島根・長崎」。

 

一方、東京の出生率は全国最下位となっています。このように、一部の地方では、若者が住み着き、出生率が増加傾向にある場所もあります。それに伴い、地域が発展することが期待できますので、高齢者にとっても「住みやすい」場所になることも十分考えられるでしょう。

 

しかし、地方にも問題点もあります。みなさんもご存知の通り、今後地方の高齢化率は確実に上昇していきます。

 

さらに、ゴミを捨てるだけでも車を使わなければいけなかったり、人間関係が希薄となった結果、孤独死してしまう高齢者の方もいます。たとえ住み慣れた土地であっても、一部の地域は「住みにくい」場所であるのだと忘れないようにしてください。

都道府県別合計特殊出生率(平成28年)

高齢者は何に消費しているのか?

人口推移の面から、都市部か地方かで「住みやすさ」が異なることを見てきました。

 

やはり、住む地域によって、日常生活、仕事、趣味の選択肢などが変わってきますので、今後も注目すべき点です。

 

ですが、高齢者の消費傾向はどうなっているのでしょうか?高齢者市場が拡大している今、こちらも見逃してはいけないポイントです。ここでは、余暇活動の大半を使うであろう”趣味”と、人生の最大の出費と言われる”住居”について見ていきます。

余暇の過ごし方に多様性が見られる

まずは、高齢者の余暇の過ごし方について見てみましょう。

 

総務省統計局の「高齢者の暮らし」によると、2006年から2016年にかけて「園芸・庭いじり・ガーデニング」が常にトップ。割合も40%付近をキープしており、非常に人気の高い趣味・娯楽であることがわかります。2番目は「読書」。割合は20%半ばから30%を推移しています。

 

ここで1点、注目してもらいたい趣味・娯楽があります。近年著しく上昇した「映画館以外での映画鑑賞」です。

 

こちらは、2006年~2011年は約10%だったのに対し、2016年になると約3倍にまで増加しています。なぜここまで増加したのでしょうか?2016年からアンケート項目が変わり”パソコンでの視聴”も含められたことも要因の1つとして考えられますが、近年はオンデマンドサービスの発展が目立ちます。

 

「自宅のPCで視聴可能」というサービスは、高齢者の映画鑑賞に対する行動にも変化をもたらしたのでしょう。

社会生活基本調査:趣味・娯楽の種類別行動者率

最後に、人生の最大の買い物である「住居」について見ておきましょう。

 

二世帯住宅という言葉は既に浸透していますが「人生100年」が謳われる現在、「四世帯住宅」が登場し注目を集めています。

 

4世代住宅とは、20~30代の夫婦を中心に、子供・父母・祖父母と一緒に暮らすことを目的とした住宅設計のことです。

 

そして、高齢者からすると、老人ホームや介護問題、高齢者を支える家族は子育てや経済面での支えが期待できるというメリットがあります。さらに、普段の日常生活でも家族がサポートしてくれるため、高齢者の余暇・消費行動は今までと違ったものに変化していくことが予想されます。

 

一方で、4世代が同居するのは難しく、たとえ分離型に設計したとしても、プライバシー面や仕事の転勤等のハードルが立ちはだかります。

 

そもそも地方では、4世代全員が同じ場所から職場・学校に通うのは困難なため、実現したとしても本当にごく一部の家庭のみでしょう。

まとめ

11万時間という時間をいかにして過ごすのか。今回は「労働(金銭面)」「住居(都市部か地方か)」「消費行動」の3点からまとめてみました。非常に大きなテーマのため、一概に言えるものではないこと、様々な視点から考える必要があることがお分かりになったかと思います。

 

そして、我々人間は心理学者マズローが呈した欲求5段階説のように「生理的欲求→安全の欲求→所属と愛の欲求→承認の欲求→自己実現の欲求」という流れで欲求を満たしていく傾向にあります。

 

ですから、もしあなたがシニアビジネスを行なうのであれば、取り扱う商品やサービスをしっかりと吟味すること。

 

特に「自己実現の欲求」となる”娯楽”関連のものは、欲求段階の最上位に位置するものです。ですから、しっかりとターゲットを見極め、念入りなマーケティングが必要となることを忘れないようにしてください。