【企業向け:人生100年時代のシニアマーケティング】シニアのニーズは、生活変化とともに大きく変わる

日本人の平均寿命は毎年右肩上がりに上昇し、今日では「人生100年時代」とまで言われています。事実、厚労省が発表した「平成29年簡易生命表」から平均寿命を見てみると、女性は「87.26歳」、男性は「81.09歳」。今後は、さらなる医療技術の発展も期待できるため、多くの方が「100年生きるもの」として人生プランを立てているかと思います。
2019/03/30

新たなマーケティングの視点

これからシニア層へと移行していく40~50歳の方々は、前例のない老後プランを立てることに不安を感じていることでしょう。

 

やはり、寿命が100年となると、老後生活は単純計算でも30年近くあるわけですから、老後資金繰り(再雇用か、貯蓄で暮らすか) だけでなく、家族との関わり方、健康維持など、様々な面で課題点が見つかります。

 

このように「シニアの悩み」は非常の多くの要素が絡み合っているため、シニアマーケティングを行う上でも、一概に「シニアのニーズ」を語ることが難しくなってきました。

 

そこで、今回は「シニアの変わりゆくライフスタイル」について深く掘り下げ、どのように「シニアのニーズ」を汲み取っていくべきなのか考えていきます。

 

個人それぞれ多種多様なライフスタイルではありますが、1つずつしっかりと見ていくことで、新たなマーケティングの視点が見えてくるはずです。

「人生100年」を、年代別で考える

冒頭でも触れた通り、今後は間違いなく「人生100年」の時代がやってきます。しかし、この事実を知って「セカンドライフは悠々自適に楽しもう!」と考えれる方は、ほんのごく一部。ほとんどの方が、老後の資金繰りを考えただけで不安になると思います。

 

ですが、日本FP協会が行なった「世代別比較 くらしお金に関する調査2018(日本FP協会調べ)」を見てみると、実に興味深い事実が浮かび上がってきます。

 

まず、20代~70代全体の「人生100年時代を迎えるにあたって、不安を感じること」の回答を見てみると、30代~50代が7割近かったのに対し、60代は54.0%、70代ともなると44.0%と、過半数を下回ります。

 

また、「暮らしに対する意識<現在のくらし><老後のくらし>」を見ると、30代から50代は現在の生活に満足している方は52.5%~60.5%、老後のくらしに安心している方は15.0%~21.0%。一方で、60代、70代と年齢を重ねるごとに、現在のくらしの満足度も、老後のくらしの安心度も上昇していく結果となりました。

日本FP協会調べ

シニア層は「加齢」に対して柔軟に考えている

もちろん、上記のアンケートだけで判断はできませんが「これから老後生活を送る40~50代の方達の不安とは裏腹に、高齢者は思った以上に不安を感じていない」ことが数字で分かりました。

 

それもそのはず、シニア層は我々よりはるかに人生の先輩。知恵や経験も豊富ですし、加齢に対して受け身に考えている方ばかりではありません。

 

次に、1986年~2016年の間、博報堂生活総合研究所が60~74歳を対象に行った「シルバー30年変化」の調査結果を見てみましょう。

 

「あなたにとって60代とは人生のどんな時期にあたりますか?」という質問に対し、「再出発の時」と回答した方は、2016年で52.9%(1986年:39.0%)。

 

また、「ご自分の気持ちや精神状態は何歳くらいだと思いますか?」という質問には、平均で53歳(2016年のみ実施)。実年齢から「−14歳」低い数字となりました。

 

若い世代やシニア予備軍からすると、老いていくことは怖いですし、自分が高齢者になったらと考えると、ゾッとする方もいるかと思います。

 

しかし、当の高齢者は、老いていく自分に悲観的にならず、むしろ主体的に「加齢」に対峙している。

私たちが思っている以上に、高齢者は「まだまだ現役」だと考えているのかもしれません。

インターネットの登場で、シニア層のニーズが多様なものに

「まだまだ現役」と考える高齢者が一定数いるのも後押ししてか、高齢者の消費行動にも変化が起き始めています。その一つの要因として考えられるのが「インターネットの登場」です。

 

インターネットのおかげで、私たち個人が受け取る情報が多種多様になりましたし、単なる通信や情報収集だけでなく、オンデマンドサービス、ネットショッピングなどサービスも多岐に渡ります。

 

また近年では、ユーザビリティーに特化したものや、UI/UXに趣向を凝らしたものも登場しており、高齢者であっても簡単に操作・閲覧ができるようになってきました。

恩恵はこれだけでありません。インターネットを上手に活用し、主体的にアクションを起こしている高齢者も少なくないです。

 

先ほどの博報堂生活総合研究所のアンケートの続きになりますが、面白い調査結果がありました。なんと、約半数近くの高齢者が「外国語を勉強したい(43%)」「スポーツクラブの会員になりたい(49%)」と答えていたのです。

 

「健康管理」としてジムを利用したい方がいるのは想像できますが、「語学学習」を求める高齢者が増えているのは、インターネットがもたらした「高齢者の新たなニーズ」ではないでしょうか。そして、今後も情報量はどんどん増えていきますし、今までになかった「実現したい高齢者の姿像」もより一層多様性が生まれることでしょう。

<雇用形態の変化も、要因の一つ

ご存知の方も多いかと思いますが、再雇用制度を導入する企業が増え、定年退職後も継続して働く方も増えてきました。

 

内閣府が2016年に行なった「高齢化の状況:高齢者の就業状況」の「あなたは、何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいですか」といった質問では、「70歳くらいまで、もしくはそれ以上」と回答した高齢者は約8割にも及びました。

 

そして、この「再雇用制度」は、当初の老後プランになかった「余剰資金」を生み出す選択肢とも考えることができます。老後資金の貯蓄をするか、消費をするのかは個人の自由ではありますが、「高齢者の新たなニーズ」を生み出す要因の一つです。

 

また、先ほどの「スポーツクラブの会員になりたい」と答えた高齢者が多いのも、健康に働くための意欲の表れとも考えられるでしょう。

内閣府データ

家族様式の変化で起きた、高齢者の生活変化

かつての日本は、「一軒家に3世帯が暮らし、家族で家計を支え合う」といった家庭が大半を占めていました。

 

しかし、近代になると核家族が増加しただけでなく、高齢者のみで暮らす「高齢夫婦世帯・高齢単独世帯」も著しく増加し、高齢者の生活も大きく変化しています。

 

2016年に内閣府が行った「高齢者の家族と世帯(図1-1-8)」の調査によると、65歳以上の高齢者のいる世帯は、日本の全世帯数の48.4%(2016年時点)。その内の58.2%を「高齢夫婦世帯・高齢単独世帯」が占めており、現在も増加傾向にあります。

 

「三世帯家族」においては、1980年時点で全体の50.1%だったのに対し、2016年時点では全体の11.0%。超高齢化社会でありながらも、家族とともに暮らしている高齢者は10世帯に1割程度しかいません。

 

このように、すでに「かつての家族様式」が崩れさっている現代。家族と共に支えられながら生きる高齢者は、今後も減少していくでしょう。

 

そして、貯蓄の有無に関わらず、高齢者自身が「個」として自分の面倒を自分で見る生活へと変化せざるを得ない状況なのです。

誰と暮らすかでも「消費行動」は変わる

次に、高齢者の消費行動について考えてみましょう。というのも、一緒に暮らす家族が、準拠集団として、高齢者の態度や行動に影響を与えている可能性があるからです。

 

例えば、同じ家で住んでいるのであれば、孫の存在を間近で感じながら過ごすことになるので、「孫中心」の消費行動をとる。

 

反対に、老夫婦のみで生活しているのであれば、「妻・夫のため」か「自分のため」の消費行動にシフトされていくと予想できます。

 

もちろん、どちらのケースも一概に一括りに考えられるものではありませんが、仮に”孫のための出費”について考えただけでも、消費行動の変化を想像できます。

 

一緒に暮らしているのであれば、「今日は、学校に迎えに行った帰りにお菓子でも買ってあげよう」と日々の細かい出費が増え、別々に暮らしているのであれば、「久しぶりに会うから、プレゼントを買ってあげよう」と、スポットで大きな出費があるといった具合です。

 

以上のことから、「子供・孫」と一緒に暮らしているのかいないのかという違いは、「シニアのニーズが変化する1つの要因」であると言えるでしょう。

 

そして、高齢者の「単独世帯・夫婦のみ世帯」が増加して続けた先には、高齢者のニーズが「家族から自分のもの」へと変わり、より一層消費行動が「個人のもの」へとシフトしていくのか?

 

シニアマーケティングを行う上で、しっかりと見ていきたい部分であります。

まとめ

今回、シニアのライフスタイルについて取り上げ、それに伴って、ニーズも変化していることを紹介しました。

 

単に寿命が延びているのではなく、かつての日本や企業の制度は大きく変わり、個人の考えが多様化している現代では、いかに高齢者のニーズが多種多様なものへと移り変わっているのかがお分かりになったかと思います。

 

ですが、最後に一点。私たちは「65歳〜85歳以上の高齢者」を、一括りのものとして考えてしまう傾向にあるようですが、これは大きな間違いです。

 

自身が10代・20代だった頃を考えてみれば明白ですが、親世代から「今の若者は…。」と言われて憤りを感じていたのではないでしょうか?確かに、別の世代からすると、どの若者も同じように映るのかもしれませんが、今一生懸命に生きている若者からすれば、その考え方自体ナンセンスなものです。

 

にも関わらず、シニアマーケティングとなると、想像上だけで高齢者を語り、「高齢者を高齢者として」扱ってしまう。これではマーケティングが失敗するのも無理はありませんよね。

 

ですから、人間は自分が目にし経験したものしか”正しく想像”できない生き物なのだと自覚し、自らの足でターゲットとなる高齢者から”生の声”を聞く。

 

その上で、アプローチを取っていくことが今後も重要になるでしょう。

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